ダンデライオンの風が舞う:3



ダンデライオンが舞う:




辿り着いたのは、丘
見た事も来た事もない、初めての場所
夏休みという事もあり夏真っ盛りなこの場所
辺りは一面、緑だ


「…ここ、どこですか」
「さぁー?しらねぇ」
「え!?」
「いま、みつけたの!」


満面の笑みで此方を見てくる
そんな『自信』…というより『余裕』は
どこからでてくるのだろうか。
反面、『不安』で押し潰されそうな俺は
早く部活に戻りたい一心だった。

どんどん歩いていく先輩に手を引かれ、俺もついていく。
初めての場所なのに、よく普通に歩けるものだ。
俺は、初めて来た場所に興味津々で辺りを見まわす猫のよう。

『不安』は何時の間にか『楽しさ』になってきた


「うわーひよ!ちょーイイけしき!」
「え、」

戻れるか心配だった俺は目印を探していた。
その時に、いきなりジロー先輩に言われ、前をみた。

「わ…」
言葉も失うほどの、絶景
ここはまだ都会の方なのだと思っていた俺は、驚いた。
街を見下ろせる高さにある、この丘。
登っている時にあまり疲労感がなかったのは、
ジロー先輩がずっと手を握って話しかけてくれたからだろうか。

そう物思いにふけっていると、手を強く握られた。
何かあったのか、とジロー先輩を見上げると、真剣な顔。
不覚にも、そんな顔にときめいてしまった自分がいた。

「ねーひよ。ここさぁ、2人だけの“ひみつきち”にしようよ!」
「え…?」
「なにかあった時は、ここにきて。もしおれがいてひよがきたら、はなし、
 なんでも聞いてやるよ。2人でみつけたから、あとべたちにはナイショな!」
「…」
「まぁ〜返事とかは、いいけどさ。何かあったら、ここ来たら?
 オレここ気に入ったし、きっとこれから、オレはここに来るよ」

なんとも返事をできなかった俺は、罪悪感があった。
本当は、うん、と返事をしたかった。
言えなかった代わりに、ジロー先輩の手を、強く握り締めた。
一瞬驚いた顔で此方を見たジロー先輩は、分かったのか分かってないのか
じゃあ、帰ろっか。とジロー先輩は来た道を帰る。


穏やかな気持ちになった俺は、初めて部長に叱られても良いと思った。








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