猫と犬の物語




物語





「日吉って、猫みたい」

帰路の途中、話題が無くなり無言が続いた。
静寂から聞こえた、微かな鳳の声
前方を見ると目が光っている猫
黒猫なのか、辺りとほとんど同化している。

俺が猫に魅入っていると、声が聞こえなかったと解釈した鳳が
もう一度、話掛けてきた

「ほら、なんか日吉って、あの猫みたい」

鳳は黒猫を見る
俺が返答に困り、鳳を見上げると
バツの悪そうな鳳の笑顔。
この話題は失敗したと思ったんだろうか

「…どこが」
「え!?どこ…えっと…雰囲気かな…」
「…」

何時の間にか猫は消え、辺りは外灯と俺達だけになった
やわらかい春の夜風が辺りを包む

「鳳こそ、」
「えッ?」
「……鳳こそ!犬っぽいよな」
「あー。よく言われる」

何故か鳳は嬉しそうな顔をしながら、はにかんだ

「…何かおかしい事言ったか?」
「いや……日吉に言われたのは、初めてだから。」

今度は満足気な笑顔を向けてきた
俺は顔が赤くなるのを感じた


もうすぐ別れ道だ





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