5.眼鏡
「…は?」
思わず日吉は声を上げた。
準レギュラー専用の部室にある机の上には、
まぁるい眼鏡一つ。
(なにかおかしい…嫌な予感がする)
その予感が的中したとわかるまで、時間は少しかかってしまった。
[眼鏡]
日吉が遅くまで練習しているのは、本人にとって日課であったし、周りの皆も知っていた。
それもあってか、今日も部室の鍵を持っているのは、日吉だ。
物を盗られてはいけない、と自主練習する前に鍵を閉めたのも、日吉。
そうすると、可笑しな点がある。
鍵を閉める時に、机の上に眼鏡なんてなかった。
ましてや、あんな眼鏡かけてる人なんて一人しか思い浮かばない。
扉から部室の中を見渡して、誰かいないか確認をしたはず。
それでは甘かったようだ。
机の向こう側には、背もたれをこちらに向けたソファー
誰かが、そこでもし寝転んでいても気付きにくい。
そう考えていくと、なぜだか急に悪寒がした。ソファーに目がいく。
今まで気付かなかった、人の気配。誰かなんて、もう分かる。
「先輩。もう起きているんでしょう?」
そう言いながらソファーに近づくと、案の定忍足が顔を出してきた。
「せぇか〜い!よぉ分かったなぁ?」
「どうせもう鍵を閉める時には、いたんでしょう?
俺が帰ってくるのを見計らって、自分の眼鏡を置いて。」
「うっわーすげー。ひよ、めっちゃ当たってんで!」
「…そんな事どうでもいいんですよ。何してるんですか」
「そんな鬱陶しい声出さんでエエやん」
「質問にはちゃんと答えて下さい」
はぁ〜い、と間抜けな声を出して忍足は返事をした。
本当は質問の答えなんか聞くつもりのない日吉は、着替え始めた。
それをわかっているのか、忍足も答えない。
「…じゃあ、帰りましょうか。」
「え!?あ、ちょ、言っときながら先出んなよ」
忍足には日吉の言葉が意外だったのか、慌てて用意をしている
(仕返し…下剋上…!)
あ、どうしよう。終わり方が気に入らない…
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